原作は谷崎潤一郎の同名の小説で、谷崎自身が経験した三角関係の戀愛事件がモチーフにされている。監督は前年「夫婦善哉」で名匠の名を確立した豊田四郎。主役にその「夫婦善哉」で絶妙な演技を示した森繁久彌を再び起用している。莊造の生活は愛貓リリーを中心に動いているといっていいほどで、異常なまでの愛情をリリーに注いでいる。母親は莊造の前妻を追い出したが、今また叔父が彼の娘を莊造にと縁談を持ちかけてくるや、その持參金に目をつけて早くも承知する。しかし當の莊造は新妻がリリーを追い出して以來、色や金などそっちのけで、リリーのことが気が気でならない。甲斐性なしの男をめぐって母、先妻、後妻が欲や嫉妬に絡んで凄烈なやりとりを繰り広げる人間喜劇である。